資格の必要性
今なぜ調査士資格なのか
日本に於いて、石綿の輸入は明治20年代から始まりましたが、その後の日清日露戦争、第二次世界大戦等により大量には普及しませんでした。
戦後の高度成長時代に本格的に石綿含有建材が注目され、昭和40年代後半(1970~1975年)にピークを迎え年間30万トンを超える量の石綿が輸入されました。
この当時の建築工事は石綿建材無しには工事が成り立ちませんでした。50年後の今日、石綿がこれほど厄介者として扱われようとはだれが想像したでしょう。
石綿による健康被害の情報は、日本より石綿使用の歴史の長い海外からもたらされました。石綿は暴露(体に入ること)から発症まで40年という潜伏期間があるので使用の歴史の浅い日本では発症例は海外よりよほど後になってからでした。国も海外からの情報を得ても対岸の火事的な対応で厳しい規制には至りませんでした。規制は段階的に行われ、最終的に2006年(平成18年)石綿含有建材の使用、製造が全面的に禁止されました。
したがって2006年以降に着工した建築物には石綿含有建材は使用されていないという前提で含有調査も現地調査は必要なく、書面のみの調査で事足ります。
数十年後には日本の全ての建築物から石綿建材は無くなる日が来ることでしょう。そうなるとこの調査者資格も出る幕が無くなります。
しかし、上記のグラフからも見て取れるように、今後30~40年程度は調査が必要です。
石綿をたっぷり含んだ建築物解体のピークは2030年前後と言われています。
石綿は経年劣化により飛散の可能性のある現場施工の吹き付け材を除けば、工場生産の成形版(板状に加工されたもの)は衝撃を与えない限り飛散の可能性はありません。石綿製品の93パーセント以上がこの成形版です。飛散による健康被害をもたらすのは、切断や破砕作業を伴う解体、改修時のみです。
解体、改修時にはこの石綿建材を取り除くか、飛散防止処置を施すかどちらかを真っ先に行います。
そのためには、①どこに石綿建材があるのか、②これは石綿建材なのか、それとも石綿無含有なのか。
これを正確に調査しなければなりません。これが調査士の業務です。
調査に基づいて適切な石綿の処理を行わない限り、その後の本体工事である解体も改修を手を付けることができません。
調査士は、解体、改修工事に於いて、
まず先頭を切って登場するトップバッターです。